「税理士試験の科目合格はしたけれど、この先どう動けばいいの?」「税理士を目指したいけれど、最初の1歩が踏み出せない」という悩みに、公認会計士・税理士の視点でお答えします。この記事では、税理士になるまでのルート、試験と実務経験の進め方、そして登録後の働き方と独立までの道筋を順番に解説します。
①なぜ税理士は「最初の1歩」で迷いやすいのか?
税理士になるには、試験に合格するだけでなく実務経験や登録も必要です。しかも税理士試験は科目合格制で、5科目そろうまでに数年かかるのが一般的です。ゴールまでの道のりが長いため、「どこから手をつければいいか分からない」と迷う方が多くなります。
- ルートが複数ある:試験5科目合格、大学院での科目免除、公認会計士・弁護士からの登録など
- 長期戦になる:働きながら数年かけて科目を積み上げるケースが多い
- 実務経験が必要:試験に受かっても、2年以上の実務経験がないと登録できない
- 働き方の選択肢が多い:会計事務所、税理士法人、一般企業、独立開業

税理士って、試験に全部受かればすぐなれるんじゃないのか?

実はそうじゃないんですよ!試験合格・実務経験・登録の3つがそろって、初めて「税理士」を名乗れるんです。
②税理士になるための基本ルート
税理士になる主なルートは、次の3つです。
| ルート | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 試験ルート | 税理士試験で5科目に合格する | 最も一般的。科目合格は一生有効で、1科目ずつ積み上げられる |
| 大学院ルート | 大学院で研究し、論文の審査を経て一部科目の免除を受ける | 税法科目・会計科目の一部を免除。残りの科目は試験で合格が必要 |
| 他資格ルート | 公認会計士・弁護士として税理士登録する | 税理士試験を受けずに登録できる(所定の研修などが必要な場合あり) |
税理士試験のしくみ
税理士試験は会計科目2科目(簿記論・財務諸表論、どちらも必須)と、税法科目3科目(所得税法か法人税法のどちらかは必須)の合計5科目に合格する必要があります。試験は例年8月に行われ、合格発表は例年11月下旬〜12月ごろです。
2023年度の試験からは受験資格が緩和され、会計科目(簿記論・財務諸表論)は受験資格がなくても受けられるようになりました。最新の試験制度は国税庁の税理士試験のページで確認してください。

1科目ずつ合格を積み上げられるのはありがたいな。

そうなんです!働きながらでも、毎年1〜2科目ずつ計画的に進められるのが税理士試験の特徴ですよ。
③試験と実務経験をどう両立する?
登録に必要な実務経験は通算2年以上です。租税や会計に関する事務が対象で、試験合格の前でも後でもカウントできます。そのため、受験生のうちから会計事務所などで働き、試験勉強と実務経験を同時に積むのが効率的です。
| 働き方 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 会計事務所・税理士法人で働きながら受験 | 実務経験を積みながら、試験で学ぶ知識がすぐ仕事に生きる | 繁忙期(1〜3月、5月など)は勉強時間の確保が大変 |
| 一般企業の経理で働きながら受験 | 収入が安定し、会社の決算・税務の流れを内側から学べる | 業務内容によっては実務経験として認められるか確認が必要 |
| 勉強に専念してから就職 | 短期間で科目合格を目指しやすい | 収入がない期間ができ、実務経験は合格後から積むことになる |
実務経験として認められる業務の範囲は、日本税理士会連合会の案内で確認できます。転職や就職の前に、その仕事が実務経験に当たるかを確かめておくと安心です。

会計事務所で働きながら勉強するのが一番効率がよさそうだな。

多くの合格者がその道を選んでいますよ。職場に税理士や受験仲間がいると、モチベーションも保ちやすいんです!
④1歩を踏み出すための具体的な手順
ステップ1:自分のルートと受験科目を決める
まずは簿記論・財務諸表論から始めるのが定番です。日商簿記2級程度の知識があると、学習がスムーズに進みます。税法科目は、将来の仕事をイメージして選びましょう。たとえば、個人事業主や中小企業の顧問を目指すなら所得税法・法人税法・消費税法が実務に直結します。
ステップ2:実務経験を積める職場を探す
受験生を歓迎する会計事務所は多く、試験休暇や勉強時間への配慮がある事務所もあります。面接では、担当件数や繁忙期の働き方を確認しておきましょう。
ステップ3:登録と税理士会への入会
試験合格と実務経験の要件がそろったら、日本税理士会連合会の名簿に登録し、事務所の所在地を管轄する税理士会に入会します。登録には登録免許税や登録手数料、税理士会の入会金・会費がかかります。金額は所属する税理士会によっても異なるため、事前に確認しておきましょう。
ステップ4:登録後も学び続ける
税理士には毎年の研修受講が求められます。税制は毎年改正されるため、研修や勉強会で最新の情報を学び続けることが、顧客からの信頼につながります。

登録してからも勉強が続くのか…。

税金のルールは毎年変わりますからね。でも、その変化に対応できることこそが税理士の価値なんですよ!
⑤よくある間違い・つまずきポイント
| よくある間違い | 何が問題か | 対策 |
|---|---|---|
| 登録前に税務相談や申告書作成を引き受ける | 無償でも税理士の独占業務に当たり、税理士法違反になるおそれがある | 登録が完了するまでは、事務所の税理士の指示のもとで業務を行う |
| 実務経験の範囲を確認しない | 登録申請のときに経験年数が足りないと分かる | 就職・転職の前に、対象業務かどうかを確認する |
| 苦手科目を後回しにし続ける | 受験期間が長引き、モチベーションが下がる | 年ごとの受験計画を立て、科目の順番を決める |
| 資格を取ればすぐ独立できると考える | 実務経験や顧客基盤がないまま開業すると経営が苦しくなる | 事務所勤務で実務と人脈を積んでから独立する |
特に注意したいのが、税理士の独占業務です。「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」は、報酬の有無にかかわらず税理士でなければ行えません。知人から「ちょっと確定申告を手伝って」と頼まれても、登録前は引き受けないようにしましょう。

タダで手伝うだけでもダメなのか!

はい、ここは誤解が多いポイントです。善意のつもりでも法律違反になりかねないので気をつけてくださいね。
⑥独立開業を目指すなら押さえたいポイント
事務所で経験を積んだあと、独立開業を目指す税理士も多くいます。開業時に考えておきたいのは次のポイントです。
- 得意分野を決める:個人事業主・フリーランス、医療、飲食、相続、IT企業など、専門分野があると紹介されやすくなります
- クラウド会計・電子申告に対応する:freeeやマネーフォワード クラウドに強いことは、若い経営者からの依頼につながります
- 他の士業とつながる:社労士・中小企業診断士・司法書士などと紹介し合える関係をつくります
- 開業資金と固定費を見積もる:税理士会の会費、会計ソフト・申告ソフト代、職業賠償責任保険などを1年分計算しておきます
- 自分自身の帳簿もきちんとつける:開業届・青色申告の手続きを行い、税理士として模範となる記帳を行う。
開業後に最初の顧客を得るきっかけは、前職や知人からの紹介、金融機関や他士業からの紹介、ブログやWebでの発信などが中心です。

得意分野をつくるのは、診断士や社労士と同じだな。

その通りです!士業はどれも「何の専門家か」が分かると、仕事の依頼がぐっと増えるんですよ。
⑦公認会計士の実体験
私自身、公認会計士として監査の仕事を経験したあと、税理士として登録し、税務の仕事にも関わるようになりました。監査で会社の数字を見る力は身についていましたが、実際の税務では、申告の期限管理や顧客とのやり取りなど、現場でしか学べないことがたくさんありました。最初は先輩税理士に質問しながら1件ずつ申告書をつくり、少しずつ自信をつけていきました。税理士の仕事は、知識だけでなく「顧客に寄り添って説明する力」が大切です。公認会計士として、まずは実務の現場に飛び込み、1件の申告を最後までやり切る経験を積むことをお勧めします。
keio-samurai(公認会計士・税理士)

試験の知識と現場の仕事は、また別物なんだな。

そうなんです。だからこそ、早めに実務に触れておくことが大きな武器になりますよ!
⑧まとめ
税理士として1歩を踏み出すためのポイントをまとめます。
- 税理士になるには、試験合格(または免除)・2年以上の実務経験・登録の3つが必要
- 税理士試験は科目合格制。会計科目は受験資格なしで受けられる
- 実務経験は合格の前後どちらでもカウントできるので、働きながら受験が効率的
- 登録前は、無償でも税務相談や申告書作成を引き受けない
- 登録後も毎年の研修で税制改正に対応し続ける
- 独立するなら得意分野・クラウド会計対応・他士業との連携がカギ
関連記事:登録後の動き方は税理士会、入会後のアクションは?やるべきこと総まとめもあわせてご覧ください。
同じシリーズの社会保険労務士、どうやって1歩を踏み出す?、中小企業診断士、どうやって1歩を踏み出す?、開業後の申告で迷ったときはフリーランスが確定申告でつまずく3つのポイントも参考にしてください。

コメント