月収30万円と70万円では、将来の年金は何倍違うのでしょうか。厚生年金には計算の基準となる報酬の上限があり、現在の給与をそのまま掛けるだけでは正しい見込みになりません。
この記事では、収入別の違いを条件を明記した簡易計算で比較します。2026年11月時点の制度を確認し、保険料と受取額、基礎年金と厚生年金、年額と月額を分けます。個人の年金見込額は加入記録で確認してください。
基礎年金と厚生年金を分ける
老齢基礎年金は、国民年金の納付済期間や免除期間などに応じて決まります。会社員等で厚生年金に加入する期間も、基礎年金の仕組みに含まれます。「国民年金は自営業者だけ」という理解では、会社員の年金を正しく捉えられません。
老齢厚生年金には、報酬と加入期間に応じて計算する報酬比例部分があります。給与が違う場合に差が出る主な部分はここです。基礎年金は、同じ納付条件なら給与が高いだけで増えるものではありません。
厚生年金への加入は、適用事業所での雇用など法律上の条件で決まります。自分の好みで国民年金か厚生年金かを自由に選ぶものではありません。まず現在の勤務先や過去の加入記録を確認しましょう。
月収ではなく標準報酬月額を見る
厚生年金保険料の計算では、基本給や一定の手当などの報酬を等級に当てはめた「標準報酬月額」を使います。税引後の手取り額ではなく、また毎月の給与明細の総額と必ず同じでもありません。賞与には別に標準賞与額を使います。
2026年11月時点の標準報酬月額の上限は65万円です。月収70万円の例でも、毎月の報酬部分の計算に70万円すべてが使われるわけではありません。健康保険の標準報酬の上限とは異なる点にも注意します。
出典・確認先:日本年金機構 厚生年金保険の保険料(2026年11月4日確認)。
| 仮の条件 | 標準報酬月額30万円 | 標準報酬月額65万円 |
|---|---|---|
| 厚生年金保険料率 | 18.3% | 18.3% |
| 本人負担の月額(半分) | 27,450円 | 59,475円 |
| 会社負担の月額(半分) | 27,450円 | 59,475円 |
この表は標準報酬月額がそれぞれ30万円・65万円と決まっている場合の厚生年金保険料だけです。健康保険料、介護保険料、所得税などは含めません。会社負担分まで本人の給与から引かれるという意味でもありません。
保険料を多く払うことと、その金額がそのまま積立残高として返ることは違います。公的年金には老後の所得だけでなく、障害や死亡に関する給付もあります。単純な貯金口座として受取額を比較しないことが大切です。
報酬比例部分の増え方を一年分で比べる
2003年4月以降の加入期間について、一般的な生年月日の例では、平均標準報酬額×5.481÷1,000×加入月数が計算の基本になります。平均標準報酬額には賞与を含み、実際には再評価率などが関係します。2003年3月以前の期間は別の計算です。
仕組みだけを比較するため、賞与なし、再評価や加算などを省略し、標準報酬月額が変わらず12か月加入した仮定を置きます。30万円では30万円×5.481÷1,000×12=年19,731.6円。65万円では年42,751.8円です。これは一年働くことで増える将来の年金年額の簡易例で、受取総額ではありません。
出典・確認先:日本年金機構 報酬比例部分の計算(2026年11月4日確認)。
| 一定条件の簡易比較 | 30万円の例 | 65万円の例 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 12か月分の年金年額への反映 | 約19,732円 | 約42,752円 | 約23,020円/年 |
| 上記を月額換算 | 約1,644円 | 約3,563円 | 約1,918円/月 |

今の月収が70万円なら、その額で40年分を計算すればいいんじゃないのか?

上限も過去の給与も変わるので、今の月収だけでは決まりません。一年分の増え方と、実際の加入記録を分けて考えましょう。
給与が同じ二人でも、賞与の支給額や加入月数が違えば報酬比例部分に差が出ます。比較のために省略した賞与を、実際の見込額でもゼロ扱いしないようにしてください。年収の総額だけでなく、月給と賞与の記録を分けて確かめます。
40年の仮定を個人の予測にしない
仮に上の条件を480か月続けたと機械的に計算すると、報酬比例部分だけで30万円の例は年789,264円、65万円の例は年1,710,072円です。月額換算で約65,772円と142,506円となり、基礎年金や加算は含みません。
ただし、2026年までの過去40年をこの式一本で計算することはできません。2003年以前の期間、当時の報酬と上限、標準賞与、再評価などがあるからです。将来40年についても制度や給与が変わり得ます。この計算は報酬の違いが反映される構造を示すもので、誰かの受給額を予測する表ではありません。
同じ現在の月収でも、就職時期、転職、育児等の期間、賞与、加入月数が違えば受給見込みは異なります。一つの条件から受取額を断定せず、それぞれの加入記録を確認することが必要です。
2027年以降の上限引上げに注意する
成立した改正では、標準報酬月額の上限は2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円へ段階的に上がります。上限に該当する人では保険料と将来の年金への反映が変わります。
月収70万円の人でも、改正後ずっと75万円の等級になるという意味ではありません。実際の報酬を各時点の等級へ当てはめます。古い65万円固定の計算を将来へそのまま延ばさず、給与明細や標準報酬の通知と最新制度を照合してください。
出典・確認先:厚生労働省 標準報酬月額の上限の段階的引上げ(2026年11月4日確認)。
自分の見込みは記録から確認する
ねんきん定期便やねんきんネットで、加入月数、勤務先、標準報酬、賞与の記録を確認します。年齢によって定期便の見込額の前提が異なるため、記載の説明も読みます。年額を月額と誤認しないよう、単位を確認してください。
ねんきんネットでは、今後の働き方や受取開始年齢など条件を変えた試算ができます。過去の記録に漏れが疑われる場合は、給与明細や勤務期間の資料をそろえて年金事務所へ確認します。ブログの平均値で不足分を埋めないことが重要です。
老齢年金は原則65歳からですが、一定の条件で繰上げや繰下げができます。開始年齢で受取額やほかの給付との関係が変わるため、増額率だけを見て判断せず、働く期間、健康状態、生活費と合わせて確認します。ここで一律の開始年齢を勧めるものではありません。
出典・確認先:日本年金機構 ねんきんネット(2026年11月4日確認)。
手取りと老後支出を別に見積もる
年金の見込額は、そのまま通帳へ振り込まれる金額とは限りません。税や保険料などが差し引かれる場合があります。所得控除は税の計算の仕組みで、年金の報酬比例部分を直接増減させるものではありません。
老後の支出は、現役時代の月収の何割と一律に決めるより、住居費、食費、光熱費、税・保険、医療、修繕を積み上げます。月々の不足と年単位の臨時支出を分けると、必要な備えが見やすくなります。
企業年金や企業型DCがある人は、公的年金と別に受取条件を確認します。私的年金や保険を新しく契約する前に、現在の制度と貯蓄でどれだけ備えられるかを把握しましょう。この記事の収入比較だけを根拠に金融商品へ加入する必要はありません。
まず、定期便の年額と加入月数を確認し、自分の記録で試算する。その結果を手取りと支出に置き換える。この順序なら、月収の大小だけで老後の安心を判断することを避けられます。
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