生成AIに質問しても「なんだか的外れな答えしか返ってこない」という方に、公認会計士・税理士の視点でお答えします。この記事では、経理や会計の仕事で生成AIから的確な答えを引き出す質問(プロンプト)の書き方を、具体的な例文つきで5つのコツにまとめて解説します。
①なぜ「質問の書き方」で答えの質が変わるのか?
ChatGPTやClaudeなどの生成AIを経理の仕事で使ってみたものの、「思ったような答えが返ってこなかった」という経験はありませんか。実はその多くは、AIの性能ではなく質問(プロンプト)の書き方に原因があります。
生成AIは、あなたの会社の事情も、質問の背景も知りません。「うちの経費、これで大丈夫?」とだけ聞かれても、業種も金額も分からないため、当たり障りのない一般論しか返せないのです。逆に言えば、必要な前提を渡してあげるだけで、答えの精度は劇的に上がります。
前提として、実名や実数値などの機密情報は入力しないのが鉄則です。この点は生成AIに会計データを入力して大丈夫?安全に使う5つのルールで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

AIに聞いても、ふわっとした答えしか返ってこないんだよな…。やっぱり使えないのか?

いえ、聞き方を少し変えるだけなんですよ!AIは「察する」のが苦手なだけで、前提を渡せば驚くほど的確になります!
②良いプロンプトの基本構造
的確な答えを引き出すプロンプトには、共通する4つの要素があります。まずはこの型を覚えるのが近道です。
| 要素 | 役割 | 記入例 |
|---|---|---|
| 役割 | AIに立場を与える | 「あなたは中小企業の経理担当者です」 |
| 前提・状況 | 背景情報を渡す | 「個人事業主で、業種はWEBデザイン業です」 |
| 依頼内容 | 何をしてほしいか | 「経費になるか判断し、勘定科目も教えて」 |
| 出力形式 | 答えの形を指定する | 「表形式で、理由も添えて」 |
この4つをすべて入れる必要はありませんが、「前提」と「出力形式」を足すだけで、答えの質は大きく変わります。

4つも要素があるのか。毎回書くのは大変そうだな…

全部そろえなくて大丈夫ですよ!特に「前提」と「出力形式」の2つを意識するだけで、十分すぎるくらい効果があります!
③的確な答えを引き出す5つのコツ
ここからが本題です。経理の現場ですぐ使える5つのコツを、順番に紹介します。
コツ1:役割と前提を最初に渡す
「あなたは公認会計士です。個人事業主(業種:カフェ経営)の相談に答えてください」のように、立場と状況を先に伝えます。これだけで、業種の実態に合った具体的な回答になります。
コツ2:曖昧な言葉を数字と条件に置き換える
「高額な備品」ではなく「1台15万円のパソコン」、「最近」ではなく「今期(当期)に購入」のように、具体的な数字や条件に置き換えます。もちろん実額ではなく、判断に必要な範囲のダミー数値で構いません。
コツ3:出力形式を指定する
「表で」「箇条書きで3つ」「初心者にもわかる言葉で」など、答えの形を先に指定します。仕訳なら「借方・貸方の表で」と頼むと、そのまま実務に使える形で返ってきます。
コツ4:一度で完璧を求めず、対話で詰める
最初の答えが微妙でも、「もっと簡潔に」「その理由を詳しく」と追加で質問すれば精度が上がります。生成AIは会話の流れを覚えているので、やり取りを重ねるほど的確になります。
コツ5:根拠(出典)を聞く
税務の質問では「その根拠となる法令や通達も教えて」と添えます。ただしAIは出典をもっともらしく創作することがあるため、示された根拠は必ず国税庁の公式情報で裏取りしてください。

「表で答えて」なんて指定していいのか。ずいぶん注文をつけるんだな。

どんどん注文していいんですよ!むしろ形を指定したほうが、AIも迷わず答えられて、こちらも使いやすい答えが返ってきます!
④【比較】ダメな質問と良い質問の例
同じ内容でも、書き方でどれだけ変わるか。実際の例で見てみましょう。
ダメな例
パソコンって経費になりますか?
→ これでは「金額や事業での使用割合によります」という一般論で終わってしまいます。
良い例
あなたは公認会計士です。個人事業主(業種:WEBデザイン業)の相談に答えてください。 今期、仕事用に1台15万円のノートパソコンを購入しました。 ・経費(または資産)としての扱い ・使う勘定科目 ・少額減価償却資産の特例が使えるか 以上を、表形式で、それぞれ理由も添えて教えてください。
→ 役割・前提・具体的な条件・出力形式がそろっているため、勘定科目や特例の可否まで踏み込んだ、実務に使える答えが返ってきます。

全然ちがう…!同じことを聞いているのに、こんなに情報量が変わるのか。

そうなんですよ!質問を1回ていねいに書くほうが、あいまいな質問を何度もやり直すより、結局ずっと早いんです!
⑤よくある間違い・注意点
プロンプトを工夫するときに、陥りやすい落とし穴を紹介します。
長く書けばいいわけではない
前提は大切ですが、関係ない情報を詰め込みすぎると、かえって焦点がぼやけます。「判断に必要な条件」だけを簡潔に渡すのがコツです。
AIの答えを鵜呑みにしない
プロンプトが上手でも、AIが古い税制や実在しない条文を答えることはあります(ハルシネーション)。特に税額や期限に関わる部分は、必ず公式情報や専門家に確認しましょう。
毎回ゼロから書かない
よく使う質問はひな形(テンプレート)にして保存しておくと効率的です。「役割+前提+依頼+出力形式」の空欄を埋めるだけの型を用意しておけば、毎回の入力が一気に楽になります。

ハルシネーションって、前の記事でも出てきたやつだな。

よく覚えていましたね!質問が上手でも最終確認は人がやる、これはセキュリティと共通の鉄則なんですよ!
⑥そのまま使える経理向けプロンプト集
最後に、コピーして使える経理・会計向けのプロンプトのひな形を用途別に紹介します。〇〇の部分を自分の状況(ダミー可)に置き換えてお使いください。
- 勘定科目の相談:「あなたは経理担当者です。〇〇(業種)の事業で、△△(費用の内容)を支払いました。適切な勘定科目を、候補と理由を添えて表で教えてください」
- 仕訳の作成:「次の取引の仕訳を、借方・貸方の表形式で作ってください。取引:〇〇。当方は△△(個人/法人)です」
- 制度の要約:「〇〇制度について、個人事業主向けにポイントを3つ、初心者にもわかる言葉で箇条書きにしてください」
- 文章の下書き:「取引先への〇〇(支払確認など)の連絡メールを、丁寧だが簡潔な文面で作ってください」
- Excelの数式:「〇〇を計算するExcelの関数を教えてください。列の構成は△△です」
生成AIそのものの仕様や、より高度な使い方を知りたい方は、Claude公式ドキュメントのような一次情報を確認するのが確実です。

これをコピーして使えばいいのか。これなら今日から試せそうだ!

ぜひ使ってみてください!最初はひな形どおりで十分。慣れてきたら自分好みに改造していくのがお勧めです!
⑦公認会計士としての実体験
私も最初は「AIは使えないな」と感じていた一人です。ところが、質問の書き方を変えた瞬間に評価が180度変わりました。今では、資料の下書きや制度の論点整理を頼むとき、必ず「役割・前提・出力形式」をセットで渡すようにしています。特に効いたのは出力形式の指定で、「表で」「借方・貸方で」と一言添えるだけで、そのまま実務に使える形で返ってくるようになりました。プロンプトは特別なスキルではなく、”相手に伝わるように頼む”という、人への依頼と同じ作法だと考えています。
keio-samurai(公認会計士・税理士)
⑧まとめ
生成AIから的確な答えを引き出す、質問の書き方のポイントを整理します。
- AIは背景を「察する」のが苦手。前提を渡すだけで答えは激変する
- 基本の型は「役割・前提・依頼・出力形式」の4要素
- 曖昧な言葉は数字と条件に置き換える(実額ではなくダミーで可)
- 一度で完璧を求めず、対話で詰めていく
- プロンプトが上手でも最終確認は人が行う(ハルシネーション対策)
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