社会保険労務士、どうやって1歩を踏み出す?

副業・ビジネス

「社労士試験に合格したけれど、何から始めればいいのか分からない」「社会保険労務士として働きたいけれど、最初の1歩が踏み出せない」という悩みに、公認会計士・税理士の視点でお答えします。この記事では、合格から登録までの流れ、勤務・開業・副業という働き方の選び方、そして最初の仕事の取り方を順番に解説します。

①なぜ社労士は「最初の1歩」で止まりやすいのか?

社会保険労務士(社労士)試験は合格率が例年おおむね5〜7%前後の難関試験です。ところが、合格したあとに「登録しないまま数年たってしまった」という方も少なくありません。

その理由は、税理士や弁護士と比べて合格後の進路が決まっていない人が多いからです。社労士試験は働きながら受験する方が多く、合格しても今の会社に残るのか、転職するのか、開業するのかを決めきれずに止まってしまいます。

  • 実務経験がない:登録に必要な「2年の実務経験」を満たしていない
  • お金がかかる:登録費用や社労士会の会費が思ったより高い
  • 仕事のイメージがわかない:試験勉強と実務の距離が大きい
  • 相談相手がいない:周りに社労士の知り合いがいない
源五郎丸
源五郎丸

試験に受かったら、すぐ社労士を名乗れるんじゃないのか?

太郎
太郎

そこが意外な落とし穴なんですよ!社労士を名乗って仕事をするには、合格したあとに「登録」が必要なんです。

②社労士として働くための基本ステップ

社労士として仕事をするまでの流れは、大きく分けて次の4段階です。

  1. 社労士試験に合格する(試験は年1回・8月、合格発表は例年10月上旬)
  2. 登録要件を満たす(2年以上の実務経験、または「事務指定講習」の修了)
  3. 全国社会保険労務士会連合会の名簿に登録し、都道府県の社労士会に入会する
  4. 勤務・開業などの形で仕事を始める

登録要件の「実務経験」は、会社の人事・総務などで労働社会保険の事務に通算2年以上携わった経験のことです。実務経験がない方は、連合会が実施する「労務管理その他の労働社会保険諸法令に関する事務指定講習」(通称:事務指定講習)を修了すれば、実務経験の代わりになります。

登録の手続きや講習の日程・費用は、全国社会保険労務士会連合会の公式サイトで最新情報を確認してください。

源五郎丸
源五郎丸

実務経験がなくても講習で登録できるのはありがたいな。

太郎
太郎

そうなんです!会社員を続けながら講習を受けて登録する方も多いですよ。

③勤務・開業・副業、どの働き方を選ぶ?

社労士の登録には、主に「開業」と「勤務等」の区分があります。どの区分で登録するかによって、できる仕事や費用が変わります。

働き方登録区分特徴向いている人
会社の人事・総務で働く勤務等自社の手続きを社労士として担当。収入は安定まず実務経験を積みたい人
社労士事務所に勤める勤務等複数の会社の手続き・給与計算を経験できる将来の開業を目指す人
独立開業する開業顧問契約を自分で獲得。収入の上限がない営業や人脈づくりが苦にならない人
会社員のまま副業開業(勤務先の承諾が前提)平日夜・土日に小さく始められるリスクを抑えて独立を試したい人

会社員のまま副業で個人の依頼を受けるには、原則として開業登録が必要です。その場合は勤務先の就業規則(副業のルール)を必ず確認し、会社の了承を得てから進めましょう。

源五郎丸
源五郎丸

いきなり開業するのは怖いな…。

太郎
太郎

その感覚は大事です!最初は勤務や副業で経験を積み、顧客のめどが立ってから独立する「段階的な開業」が安全ですよ。

④1歩を踏み出すための具体的な手順

「何から手をつけるか」が決まると、迷いはぐっと減ります。合格後の1年間は、次の順番で動くのがお勧めです。

ステップ1:働き方と時期を決める

まずは「1年後にどうなっていたいか」を紙に書き出します。勤務社労士として経験を積むのか、副業で小さく始めるのか、数年以内に開業するのかで、次の行動が変わります。

ステップ2:登録要件を満たす

実務経験が2年に満たない場合は、事務指定講習に申し込みます。人事・総務の仕事をしている方は、会社に実務経験の証明を出してもらえるか確認しておきましょう。

ステップ3:登録と社労士会への入会

登録には、登録免許税や登録手数料のほか、都道府県社労士会の入会金・年会費がかかります。金額は都道府県や登録区分によって異なるため、事前に所属予定の社労士会に確認しておくと安心です。

ステップ4:人とつながり、実務に触れる

  • 社労士会の研修・支部活動に参加して、先輩社労士とつながる
  • 給与計算や労務のソフト(クラウド給与・勤怠など)の操作に慣れておく
  • 税理士・会計士など他の士業と知り合い、紹介し合える関係をつくる
  • ブログやSNSで学んだことを発信し、専門分野を見せていく
源五郎丸
源五郎丸

お金も時間もかかるんだな。何から削ればいいんだ?

太郎
太郎

費用は登録区分でかなり変わるので、まずは会費の一覧を確認しましょう。いきなり全部そろえず、必要なものから順番に、が鉄則です!

⑤よくある間違い・つまずきポイント

よくある間違い何が問題か対策
登録せずに「社労士」を名乗る社労士法違反になるおそれがある登録が完了するまでは「社労士試験合格者」と名乗る
会社に黙って副業で開業する就業規則違反・トラブルの原因になる副業のルールを確認し、事前に了承を得る
開業費用を安く見積もる会費・ソフト代・広告費で資金が足りなくなる1年分の固定費を計算してから開業する
試験知識だけで実務に入る手続きの実際の流れや期限を知らず、ミスにつながる講習・研修・先輩の実務で手順を身につける
何でも引き受ける専門外の仕事でミスや赤字が出やすい得意分野を決め、専門外は他の士業に紹介する

特に、登録前に「社労士」と名乗って報酬を受け取ることは法律で禁止されています。1号業務(書類作成)・2号業務(手続代行)は社労士の独占業務なので、登録前に依頼を受けないよう注意しましょう。

源五郎丸
源五郎丸

「合格者」と「社労士」は違うってことか。

太郎
太郎

その通りです!名刺やSNSのプロフィールも、登録前は「社労士試験合格」と書くのが安全ですよ。

⑥お金の面で知っておきたいポイント

開業や副業で社労士業務を始めると、個人事業主として確定申告が必要になります。会計士・税理士の視点から、最初に押さえておきたいのは次の3つです。

  • 開業届と青色申告承認申請書を出す:青色申告なら最大65万円の特別控除が受けられます(65万円控除はe-Taxでの申告などが条件)
  • 登録費用や会費は経費になる:社労士会の年会費、研修費、書籍代、業務ソフトの利用料などは事業の経費です
  • 事業用の口座とカードを分ける:クラウド会計と連携すれば、記帳の手間が大きく減ります

副業で所得が20万円を超えると、会社員でも確定申告が必要になります。住民税の納め方にも注意が必要です。税金の制度は国税庁のホームページでも確認できます。

源五郎丸
源五郎丸

経費になるなら、会費の負担も少し気が楽になるな。

太郎
太郎

はい!最初から帳簿をきちんとつけておけば、確定申告の時期に慌てずに済みますよ。

⑦公認会計士の実体験

私自身、公認会計士として独立したとき、最初の1年は「何から始めればいいのか」と手探りの連続でした。振り返ると、仕事につながったのは、資格の知識そのものよりも、同業者や他の士業とのつながりでした。社労士の先生方とも、顧問先の給与や社会保険の相談をきっかけに協力するようになり、互いに紹介し合う関係が生まれました。資格は「持っているだけ」では仕事になりませんが、「小さく動き始めた人」には必ず次の機会が来ます。公認会計士として、まずは研修や勉強会に一度参加してみることをお勧めします。

keio-samurai(公認会計士・税理士)
源五郎丸
源五郎丸

資格よりも人とのつながり、か。確かにそうかもな。

太郎
太郎

同じ士業同士、得意分野で助け合えると心強いんですよ!

⑧まとめ

社会保険労務士として1歩を踏み出すためのポイントをまとめます。

  • 社労士を名乗るには、合格後に登録が必要
  • 実務経験がなくても事務指定講習で登録要件を満たせる
  • 働き方は勤務・開業・副業の3つ。最初は段階的に始めるのが安全
  • 登録費用・会費は都道府県・登録区分で異なるので事前に確認
  • 登録前に「社労士」と名乗ったり、独占業務を受けたりしない
  • 開業・副業なら開業届・青色申告・事業用口座を最初に準備

関連記事:平日夜・土日でできる社労士の副業 資格を活かす働き方を解説もあわせてご覧ください。

実務の力をつけたい方は給与計算実務能力検定、実務への活用方法、士業団体に入った後の動き方は税理士会、入会後のアクションは?やるべきこと総まとめも参考にしてください。

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