「せどりの記帳、freeeとマネーフォワード クラウド会計のどっちを使えばいいの?」という疑問に、公認会計士・税理士の視点でお答えします。この記事では、せどり特有の会計のポイント(在庫・売上原価・Amazon手数料)と、2つのクラウド会計ソフトの選び方・使い方をわかりやすく解説します。
①なぜせどりは記帳でつまずきやすいのか?
せどり(転売ビジネス)は、商品を仕入れて販売する「物販」です。ブログやライターの副業と違い、仕入・在庫・販売手数料・送料といったお金の動きが細かく、取引件数も多くなりがちです。
そして税金がかかるのは「売上」ではなく「利益(所得)」です。利益を正しく計算するには、売れ残った在庫を経費から外すという、せどりならではの処理が欠かせません。ここを知らずに「仕入れた金額を全部経費」にしてしまうと、利益が小さく計算され、税務調査で指摘される原因になります。
- 取引件数が多い:1商品ごとに仕入・売上・手数料・送料が発生
- 販路が複数:Amazon、メルカリ、ヤフオク、楽天などでデータ形式がバラバラ
- 在庫がある:年末に残った商品の金額を把握する必要がある
- 私用と混ざりやすい:個人のクレジットカードで仕入れているケースが多い

仕入れたお金は全部経費だと思ってたぞ…違うのか?

そこが一番の落とし穴なんですよ!経費になるのは「その年に売れた分」の仕入だけなんです。
②せどり会計の基本「売上原価」と「棚卸」
せどりの利益計算で一番大切なのが売上原価です。売上原価とは「その年に売れた商品の仕入値」のことで、次の式で計算します。
売上原価 = 期首の在庫(1月1日) + 1年間の仕入 − 期末の在庫(12月31日)
| 項目 | 金額(例) | 説明 |
|---|---|---|
| 期首在庫 | 20万円 | 前年から繰り越した商品 |
| 当期の仕入 | 300万円 | 1年間に仕入れた商品 |
| 期末在庫 | 50万円 | 12月31日に残っている商品 |
| 売上原価 | 270万円 | 20万+300万−50万 |
この例では、仕入300万円のうち経費になるのは270万円です。残りの50万円は「商品(資産)」として翌年に繰り越し、売れた年に経費になります。そのため12月31日時点の在庫を数える「棚卸(たなおろし)」が必須です。
在庫の金額の計算方法(評価方法)は、税務署に届出をしていない場合、原則として最終仕入原価法(最後に仕入れたときの単価で評価する方法)になります。詳しくは国税庁のホームページで「棚卸資産の評価方法」をご確認ください。

年末に在庫を数えるのか…FBA倉庫にある分はどうするんだ?

FBA倉庫の在庫も、発送途中の商品も自分の在庫です!セラーセントラルの在庫レポートを12月31日時点で保存しておくのがお勧めです。
③freeeとマネーフォワード クラウド会計の違い
個人のせどりでよく使われるクラウド会計ソフトが、freee会計とマネーフォワード クラウド確定申告・会計です。どちらも銀行口座やクレジットカードと連携して明細を自動で取り込めますが、入力の考え方に違いがあります。
| 比較ポイント | freee会計 | マネーフォワード クラウド |
|---|---|---|
| 入力の考え方 | 「取引」単位で入力(簿記の知識が少なくても使いやすい) | 「仕訳」単位で入力(簿記の知識があると使いやすい) |
| 向いている人 | 簿記が初めての人、スマホ中心で処理したい人 | 簿記経験者、税理士に見てもらう予定がある人 |
| 自動取込 | 口座・カード・各種サービスと連携 | 口座・カード・各種サービスと連携 |
| 在庫管理 | 年末に期末在庫を登録する運用が基本 | 年末に期末在庫を仕訳する運用が基本 |
| 確定申告 | 画面の質問に答えて申告書作成・e-Tax対応 | 決算書・申告書作成・e-Tax対応 |
なお、どちらのソフトも「商品1個ずつの在庫管理」までは得意ではありません。せどりの在庫は、スプレッドシートや在庫管理ツールで管理し、会計ソフトには年末に「期末在庫の合計額」だけを入れる、という役割分担が現実的です。料金プランや連携できるサービスは変更されることがあるため、最新情報は各公式サイトで確認してください。

結局どっちがいいんだ?

簿記が初めてならfreee、簿記の経験があるならマネーフォワードが目安です。どちらも無料期間があるので、実際に触って決めるのが一番ですよ!
④せどりの記帳手順と仕訳例
freeeでもマネーフォワードでも、せどりの記帳は次の流れで進めるとスムーズです。
- 事業用の口座・クレジットカードを連携する
- 自動仕訳ルールを作る(例:仕入先のカード明細→「仕入高」、配送業者→「荷造運賃」)
- 販路ごとの売上を入れる(Amazonはペイメントレポート、メルカリ等は販売履歴を使う)
- 毎月1回、未処理の明細がないか確認する
- 12月31日に棚卸をして、期末在庫を登録する
Amazon売上は「総額」で記帳する
Amazonからの入金は、手数料や送料が差し引かれた後の金額です。この入金額だけを売上にするのは誤りで、売上と手数料を分けて(両建てで)記帳します。
| 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 商品を5万円で仕入れ(カード払い) | 仕入高 50,000 | 未払金 50,000 |
| Amazonで商品が10万円売れた | 売掛金 100,000 | 売上高 100,000 |
| 販売手数料・FBA手数料 1.5万円 | 支払手数料 15,000 | 売掛金 15,000 |
| Amazonから入金 8.5万円 | 普通預金 85,000 | 売掛金 85,000 |
| 年末:期末在庫50万円を計上 | 商品 500,000 | 期末商品棚卸高 500,000 |
freeeでは「取引」画面で売上と手数料を1つの取引にまとめて登録でき、マネーフォワードでは上の表のとおり仕訳で入力します。期末在庫は、freeeなら決算の「棚卸」登録、マネーフォワードなら決算整理仕訳として入力します。

12月に売れて1月に入金された分はどうなるんだ?

商品を引き渡した12月の売上です!入金日ではなく「売れた日(出荷した日)」で計上し、年末時点では「売掛金」として残すんですよ。
⑤せどり記帳のよくある間違い
せどりの帳簿を見ていると、次のようなミスをよく見かけます。どれも税務調査で指摘されやすいポイントです。
| よくある間違い | 何が問題か | 正しい対応 |
|---|---|---|
| 仕入を全額その年の経費にしている | 売れ残り分まで経費になり、利益が少なくなる | 年末に棚卸をして期末在庫を計上 |
| Amazonの入金額だけを売上にしている | 売上が少なく見え、消費税の判定もずれる | 売上と手数料を分けて記帳 |
| 入金日で売上を計上している | 年をまたぐ売上が翌年にずれる | 販売(出荷)した日に計上 |
| 私用の買い物と仕入が混ざっている | 経費の根拠を説明できない | 事業用カードを分ける・私用は「事業主貸」 |
| フリマで個人から仕入れた記録がない | 仕入の証拠が残らない | 購入履歴の画面を保存し、相手・日付・品名・金額を記録 |
また、中古品を継続して仕入れて販売する場合は、古物商許可が必要になるケースがあります。許可の要否は管轄の警察署に確認しましょう。

全部やってた気がする…今からでも直せるのか?

今年の分なら、年末までに記帳ルールを整えれば十分間に合います。過去の申告に誤りがあれば、早めに税理士に相談するのが安心ですよ。
⑥節税と効率化のポイント
青色申告の65万円控除を狙う
開業届と青色申告承認申請書を出し、複式簿記で記帳すると、最大65万円の青色申告特別控除が受けられます(65万円の控除にはe-Taxでの申告または優良な電子帳簿保存が必要)。freeeもマネーフォワードも、日々の入力から自動で複式簿記の帳簿ができるため、65万円控除と相性が良いのが大きなメリットです。
インボイス・電子帳簿保存法への対応
- 電子帳簿保存法:Amazonやネットショップの領収書など、データで受け取ったものはデータのまま保存します。クラウド会計のファイル保存機能を使うと管理が楽になります。
- インボイス(消費税):課税事業者の場合、古物商が一般の消費者から中古品を仕入れたときは、一定の事項を帳簿に書けばインボイスがなくても仕入税額控除ができる特例があります。
- 2割特例:インボイス登録で課税事業者になった個人は、2026年分まで納める消費税を売上の消費税の2割にできる特例があります。
- 免税事業者からの仕入:インボイスのない仕入の控除割合は2026年10月から段階的に縮小されます。
消費税の特例は改正が続いているため、最新の取扱いは国税庁のインボイス制度特設サイトで確認してください。
経費にできるもの
仕入のほか、送料・梱包資材・販売手数料・倉庫代・リサーチツールの利用料・仕入に行く交通費なども経費になります。自宅を作業場や在庫置き場にしている場合は、家賃や電気代の一部を家事按分で経費にできます。

65万円控除はでかいな!ソフト代の元は取れそうだ。

そうなんです!しかもクラウド会計の利用料自体も経費になりますよ。
⑦公認会計士の実体験
私自身、せどりをしている方から「売上は増えているのに、利益がいくらなのか分からない」という相談を受けたことがあります。帳簿を確認すると、仕入はすべて経費に入っている一方、在庫の計上がなく、Amazonの売上も入金額だけで記帳されていました。販路ごとの売上レポートを使って総額で記帳し直し、年末の在庫を計上したところ、実際の利益は本人の感覚とかなり違っていました。せどりは「在庫」と「売上の総額」を押さえるだけで、帳簿の正確さが大きく変わります。公認会計士として、まずは事業用カードを1枚に絞り、クラウド会計の自動取込と毎月1回の見直しを習慣にすることをお勧めします。
keio-samurai(公認会計士・税理士)

儲かってると思ってたのに、実は違ったなんてこともあるのか…。

逆のパターンもあります。正しい数字が分かれば、仕入の判断もしやすくなるんですよ!
⑧まとめ
せどりの記帳をfreee・マネーフォワード クラウド会計で効率化するポイントをまとめます。
- 経費になるのは「売れた分」の仕入だけ。12月31日の棚卸で期末在庫を計上する
- Amazon売上は総額で記帳し、手数料は「支払手数料」で分ける
- 売上は入金日ではなく販売(出荷)日で計上する
- 簿記が初めてならfreee、簿記経験者ならマネーフォワードが目安
- 事業用の口座・カードを分け、自動取込+毎月の見直しを習慣にする
- 青色申告65万円控除・インボイス・電子帳簿保存法への対応も忘れずに
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自宅を在庫置き場にしている方は個人事業主の「家事按分」完全ガイド、AIでさらに記帳を効率化したい方はエージェント型AIとマネーフォワード会計・freee会計の活用事例も参考にしてください。

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