年金生活者も、自治体へふるさと納税の寄附をすることはできます。ただし、「寄附できること」と「自己負担を原則2,000円に収める控除を受けられること」は別です。年金収入だけで一律の上限額を決めず、所得、所得控除、住民税の所得割、他の寄附や控除を確認しましょう。
元の記事で触れた給与所得者との違い、申告とワンストップ特例の使い分けを整理し直します。会社員なら年末調整でふるさと納税が自動的に精算される、ということはありません。年金生活者も給与所得者も、条件に応じて必要な申告・申請を行います。
寄附の仕組みと控除の範囲

年金があるなら、返礼品を選んで申し込めばいいのか?

先に税金と控除の条件を確かめたいですね。年金の額が同じでも、家族や医療費などで上限が変わるんですよ。
ふるさと納税では、総務大臣の指定を受けた自治体への寄附について、一定の上限内で寄附額のうち2,000円を超える部分が所得税・個人住民税から控除されます。自己負担の2,000円は通常、一回の寄附ごとでなく、その年の対象寄附の合計で考えます。
たとえば対象寄附を年2万円行い、必要な手続きと全額控除の上限を満たすなら、控除の合計は18,000円という例になります。現金18,000円がそのまま振り込まれるとは限りません。確定申告による所得税の精算と翌年度住民税の減額、ワンストップ特例による住民税の減額は、反映のしかたが異なります。
出典・確認先:国税庁・ふるさと納税(寄附金控除)(2026年11月3日確認)。
年金収入と所得を分けて確認する
公的年金等の収入金額と、公的年金等に係る雑所得は同じではありません。課税対象の公的年金等では、公的年金等控除などを反映して所得を計算します。給与収入がある場合は給与所得を、その他の所得がある場合はその所得も整理します。遺族年金や障害年金など非課税の給付は、同じ「年金」という言葉でも扱いが違います。
さらに、社会保険料、扶養、医療費などの所得控除や、税額控除が関係します。以前の「年金が200万円なら使える」「250万円なら2〜3万円」といった例を、そのまま自分の上限に当てはめないでください。同じ受取額でも年齢、配偶者、他の所得や控除によって結果は変わります。
住民税が非課税など、差し引く税額が少ない場合には、税負担軽減も小さい、または受けられないことがあります。非課税かどうかは世帯という言葉だけでなく寄附する本人の課税状況を確認します。家族名義の課税額を、自分名義の寄附の上限として使うことはできません。
出典・確認先:国税庁・公的年金等の課税関係(2026年11月3日確認)。
| 準備する資料 | 確認する項目 | 間違えやすいこと |
|---|---|---|
| 公的年金等の源泉徴収票 | 課税対象の年金収入、源泉徴収税額等 | 振込額をそのまま年金収入とする |
| 給与の源泉徴収票等 | 給与所得や他の所得の見込み | 年金収入と給与収入を単純に足す |
| 所得控除に関する資料 | 社会保険料、扶養、医療費等 | 前年と同じ控除額と思い込む |
| 住民税の通知書 | 本人の所得割額と税額控除等 | 均等割等を含む総額から上限を決める |
| 今年の寄附記録 | 自治体、名義、金額、申請状況 | 家族の寄附と合算する |
前年の通知書と今年の寄附年を区別する
2026年に行う寄附は2026年の所得等を基に検討し、住民税への反映は原則として2027年度です。手元の2026年度の住民税通知書は、基本的に2025年の所得等に基づくため、今年の寄附上限をそのまま確定する資料にはなりません。参考にする年と寄附する年を書いておきます。
退職した年や、給与収入がなくなった翌年は特に注意が必要です。過去の給与を前提にしたシミュレーションや早見表を使うと、現在の上限とずれることがあります。年金生活者向けの入力項目がある計算を使い、公的年金等控除、所得控除、他の所得の欄を確認してください。
「計算結果の8割なら必ず安全」のような一律の割合はありません。医療費や収入がまだ確定しないときは、何が変わりそうかを整理して見直します。必要なら住民税の自治体窓口や税理士へ、資料と計算の前提を示して相談します。
確定申告不要制度とワンストップ特例は別
公的年金等の確定申告不要制度には、年金収入400万円以下、公的年金等以外の所得20万円以下などの条件があり、源泉徴収の対象などの確認も必要です。この制度に該当することだけで、ふるさと納税の控除が自動的に反映されるわけではありません。所得税の申告が不要でも住民税の申告が必要な場合があります。
ワンストップ特例は、もともと確定申告等をする必要がない人が、その年の寄附先を5自治体以内にするなどの条件を満たし、各自治体へ申請する方法です。5回の寄附という意味ではありません。申請の期限や必要な本人確認、住所変更の届出については、寄附先自治体の現行案内を確認します。
医療費控除等のために確定申告をする場合は、ワンストップ特例を申請した分も含めて、対象となるすべてのふるさと納税を申告へ入れます。先に特例を申請していたから、その分は申告不要と考えないでください。
出典・確認先:政府広報・年金受給者の確定申告不要制度(2026年11月3日確認)。
出典・確認先:国税庁・令和7年分確定申告の手引き(申告不要制度・ワンストップ特例)(2026年11月3日確認)。
寄附先は上限と手続きが分かってから選ぶ
ふるさとチョイスなどのポータルは、寄附先、使い道、返礼品を探す方法の一つです。ポータルの表示だけで自分の控除を保証されるわけではありません。上限の見込み、寄附者の名義、申告方法を整理した後に、対象自治体や受付条件を確認して使いましょう。
返礼品は、量、配送時期、保管場所、定期便の回数、受取りが難しい時期を確認します。年金生活での家計の見直しに使う場合も、先に寄附金全額を支払う点に注意します。税負担の軽減は後から反映されるため、今月の生活費がその場で安くなる制度ではありません。
年末に申し込む場合は、申込日と決済・入金の完了、自治体が寄附を受け付ける日を区別します。支払方法ごとの締切も確認し、最後の日に申し込めば必ずその年分になるとは考えないでください。
計算と申告を家族分まで混ぜない
夫婦で年金を受け取っている場合は、それぞれの所得と税額、寄附者名義、申請を分けて管理します。配偶者の所得が多いから、本人名義で寄附した額も同じように控除できる、とは考えないでください。支払方法の名義条件についても寄附先の案内を確認します。
相談するときは「2026年分の寄附について、年金収入の見込みはこの金額で、医療費控除を使う可能性があり、今年はすでにこの寄附をしています」と前提を示します。収入の合計だけを伝えるより、上限に影響する未確定事項を確認しやすくなります。
シミュレーションの結果は保存日と入力した条件を残してください。医療費や給与の見込みが変わったら、同じ条件で計算し直すのではなく、変更した項目を更新して寄附済みの額と比べます。
寄附後に残しておく記録
| 時点 | 確認すること |
|---|---|
| 申込み時 | 年分、自治体、金額、名義、決済の完了 |
| 書類到着時 | 受領証明書等を保存、特例を使うなら申請完了を確認 |
| 申告時 | 医療費控除等の申告有無を再確認し、必要なら全寄附を申告 |
| 翌年度 | 住民税通知書の控除を確認し、疑問は資料を添えて自治体へ相談 |
返礼品が届いたことは、税の手続きが終わった証拠ではありません。書類の受取り、申請や申告、その後の通知までを一つの表で管理すると、やり忘れを見つけやすくなります。
まず今年の年金と他の所得、控除の見込み、すでに行った寄附をまとめましょう。年金生活者だから使えない、ある年金額があれば必ず得になる、と決め付けず、自分の課税状況に基づいて判断してください。
関連記事:2026年ふるさと納税の年末確認。


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