法人税法の対象となる海外LLPは?外国法人の判定を解説

会計

「海外のLLPやLPSに出資したら、日本では法人税の対象になるの?それとも組合として構成員に課税されるの?」という疑問に、公認会計士・税理士の視点でお答えします。この記事では、どんな海外事業体が日本の法人税法上の「外国法人」に当たるのか、その判断基準と主な事業体ごとの扱いを、実務での注意点とあわせて解説します。

※ 海外事業体の税務上の扱いは非常に専門的で、個別事情によって結論が変わります。本記事は考え方の全体像をつかむためのもので、実際の判断は必ず税理士等にご相談ください。

①なぜ海外LLPの税務が問題になるのか?

海外投資や海外進出で、米国LLC・デラウェアLPS・英国LLPといった海外の事業体に出資する機会が増えています。このとき最初にぶつかるのが、「その事業体は日本で法人として扱われるのか、それとも組合(パススルー)として扱われるのか」という問題です。

ここを間違えると、損益の取り込み方、外国税額控除、二重課税の有無まで、税額がまるごと変わってしまいます。名前が「LLP」でも、日本の税務上は法人(外国法人)として法人税法の対象になることがあるのです。

源五郎丸
源五郎丸

LLPって、日本だと組合=パススルーだよな。海外のLLPも同じじゃないのか?

太郎
太郎

それが違うんです。名前ではなく「現地の法律でどんな性質か」で判断されるんですよ!

②基本概念:外国法人と「構成員課税」の分かれ目

日本の法人税法は、海外の事業体を大きく2つに分けて扱います。

日本での扱い課税の仕組み
外国法人に当たるその事業体自体を法人として課税(法人税法の対象)。出資者は分配・配当の段階で課税
外国法人に当たらない(組合型)パススルー。損益が出資者に直接帰属し、個人は所得税・法人は法人税

ポイントは、「LLP」「LLC」といった名前では決まらないということ。日本の税務では、その事業体が現地の法律のもとでひとつの独立した権利義務の主体と言えるかどうかで判断します。

③判断基準:最高裁が示した考え方

この論点については、最高裁判所 平成27年(2015年)7月17日判決が重要な基準を示しました。米国デラウェア州のLPS(リミテッド・パートナーシップ)が日本の租税法上の「法人」に当たるかが争われ、最高裁は「法人(外国法人)に当たる」と判断しました。

その判断のステップは、おおむね次のとおりです。

  1. 設立準拠法(現地の法律)で法人格が与えられているかが明確なら、それに従う
  2. 明確でない場合は、その事業体が自らの名で権利を持ち義務を負う主体(権利義務の帰属主体)と言えるかで判断する

デラウェアLPSは、自分の名前で財産を持ち契約もできる独立した主体と認められたため、日本では法人=法人税法の対象とされました。「現地でパススルー課税されているか」は、日本での法人該当性とは別問題である点がポイントです。

源五郎丸
源五郎丸

現地で組合扱いでも、日本では法人になることがあるのか…

太郎
太郎

はい。だから「自分の名で権利義務を持てる主体か」を現地の法律で確認するのが出発点です!

④主な海外事業体ごとの扱い

あくまで一般的な傾向ですが、代表的な事業体の扱いを整理すると次のようになります(最終的には個別判断が必要です)。

海外事業体日本での扱いの傾向
米国 デラウェアLPS外国法人(最高裁で法人と判断)=法人税法の対象
米国 LLC独立した主体性が強く、外国法人として扱われることが多い
英国 LLP現地で法人格を持つため、外国法人として扱われる可能性が高い(要個別判断)
ケイマン等のリミテッド・パートナーシップ組合型(パススルー)として扱われることが多い

同じ「LLP」「パートナーシップ」でも、準拠する国・州の法律の中身しだいで結論が変わるのが難しいところです。設立国のルールを個別に確認する必要があります。

⑤よくある間違い・注意点

日本のLLP・合同会社と混同しない

日本のLLP(有限責任事業組合)はパススルーですが、海外のLLPは同じ名前でも法人扱いになり得ます。「日本のLLPと同じだろう」という思い込みが、いちばんの失敗のもとです。

二重課税と外国税額控除

海外で組合(パススルー)として現地課税され、日本で法人扱いになると、課税のタイミングや納税者がずれて二重課税が起きやすくなります。外国税額控除が使えるかどうかも、法人扱いか組合扱いかで変わるため、事前の整理が欠かせません。

  • 現地の課税方法と、日本での扱いが一致するとは限らない
  • 法人扱いなら、日本ではタックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)の検討も必要になることがある
  • 租税条約の適用関係もあわせて確認する

⑥実務での進め方

海外事業体に関わるときの、基本的な進め方です。

  1. 設立準拠法を特定する(どの国・州の、どの法律に基づく事業体か)
  2. 現地の法律で法人格・権利義務の帰属主体性があるかを確認する
  3. 現地の課税方法(法人課税かパススルーか)を確認する
  4. 日本での扱い・外国税額控除・租税条約を含めて、出資前に税理士と整理する

判断のよりどころとして、国税庁の質疑応答事例やタックスアンサーも参考になりますが、海外事業体の判定は最終的に個別判断です。金額が大きい投資ほど、事前の専門家確認が結果的にコストを抑えます。

⑦著者の実体験

私自身、海外ファンドへの出資を「現地でパススルーだから日本でも組合扱いだろう」と考えていたお客様のケースに何度も立ち会いました。実際には設立準拠法を確認すると外国法人に当たり、損益の取り込み方も外国税額控除の扱いも大きく変わる、というのはよくある話です。海外事業体は名前や現地の課税方法だけで判断せず、必ず「設立準拠法でどんな主体か」から確認する——公認会計士として、これを出資前に行うことを強くお勧めします。

keio-samurai(公認会計士・税理士)

⑧まとめ

「法人税法の対象となる海外LLP」のポイントを整理します。

  • 海外事業体が法人税法の対象かは、名前ではなく設立準拠法での性質で決まる
  • 判断の中心は「自らの名で権利義務を持つ主体か」(最高裁 平成27年判決)
  • デラウェアLPSは外国法人と判断された。米国LLCや英国LLPも法人扱いになりやすい
  • 現地でパススルーでも、日本では法人扱いになり得る(二重課税・外国税額控除に注意)
  • 日本のLLP・合同会社との混同に注意。判定は必ず個別に専門家へ

海外事業体の税務は、入口の「法人か組合か」を外すと後々の申告全体に影響します。出資を検討する段階で、設立準拠法の確認と専門家への相談をセットにしておきましょう。

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