「父が経営していた会社の株式を相続することになったけれど、上場していない株はどうやって評価するの?」という疑問に、公認会計士・税理士の視点でお答えします。この記事では、相続税における未上場株式(取引相場のない株式)の評価について、4つのステップに分けて手順をわかりやすく解説します。
①なぜ未上場株式の評価が重要なのか?
上場株式は、証券取引所の株価をもとに評価できます。しかし、中小企業などの未上場株式には市場の株価がありません。そこで相続税では、国税庁の財産評価基本通達に定められたルールに従って、株式の価値を計算します。
未上場株式の評価額は、会社の業績や財産の状況によって思った以上に高くなることがあります。評価額が高いと相続税も増え、場合によっては相続人が納税資金を用意できないという問題も起こります。
- 市場価格がない:決められた計算方法で評価する必要がある
- 評価額が高くなりやすい:利益が多い会社、不動産を多く持つ会社は特に注意
- 株式は現金化しにくい:売って納税資金をつくることが難しい
- 事業承継に直結する:後継者が株式を引き継げるかどうかに影響する

上場してない会社の株なんて、たいした価値はないと思ってたぞ。

そこが落とし穴なんですよ!長く黒字を続けてきた会社だと、株式の評価額が数億円になることも珍しくありません。
②評価の全体像:4つのステップ
未上場株式の評価は、次の4つのステップで進めます。
- 株主の判定:株式を取得した人が「同族株主」かどうかを判定し、評価方式(原則的評価方式か特例的評価方式か)を決める
- 会社規模の判定:従業員数・総資産価額・取引金額で、大会社・中会社・小会社に区分する
- 特定の評価会社の判定:株式や土地を多く持つ会社など、特別な評価が必要な会社かどうかを確認する
- 評価額の計算:類似業種比準価額・純資産価額・配当還元価額を使って評価額を計算する
評価の結果は、相続税申告書に添付する「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」にまとめます。様式と記載方法は国税庁のホームページで確認できます。

4ステップか。思ったより順序立ってるんだな。

はい!順番どおりに判定していけば、どの計算方法を使うかが自然に決まるようになっているんですよ。
③ステップ1・2:株主の判定と会社規模の判定
ステップ1:株主の判定
まず、株式を取得した人が会社の経営を支配する立場の株主かどうかを判定します。基本的な考え方は次のとおりです。
| 株主の区分 | 評価方式 | 考え方 |
|---|---|---|
| 同族株主等(経営を支配する株主) | 原則的評価方式 | 会社の価値そのものを反映した評価(類似業種比準価額・純資産価額) |
| 同族株主以外の株主(少数株主) | 特例的評価方式(配当還元方式) | 配当を受け取る権利としての価値で評価。一般に評価額は低くなる |
同族株主とは、株主の1人とその親族などのグループで、議決権の合計が30%以上(50%超のグループがある会社では50%超)となる株主のことです。ただし、同族株主であっても、取得後の議決権割合が5%未満で役員でないなど、一定の要件を満たす場合には配当還元方式で評価できることがあります。
ステップ2:会社規模の判定
次に、会社を大会社・中会社・小会社に区分します。判定には次の3つの基準を使います。
- 従業員数:70人以上なら、ほかの基準にかかわらず大会社
- 総資産価額(帳簿価額):直前期末の貸借対照表の資産合計
- 取引金額:直前期末以前1年間の売上高
総資産価額と取引金額の基準額は、卸売業/小売・サービス業/それ以外の業種によって異なります。中会社はさらに「大・中・小」の3段階に分かれ、これが後の計算に影響します。

同じ株でも、誰が相続するかで評価額が変わるのか!

その通りです!経営に関わる後継者と、少しだけ株を持つ親族とでは、評価方法がまったく違うんですよ。
④ステップ3・4:特定の評価会社の判定と評価額の計算
ステップ3:特定の評価会社の判定
次のような会社は「特定の評価会社」として、原則として純資産価額方式で評価します。会社の実態が通常の事業会社と違うため、類似業種との比較がなじまないからです。
- 株式等保有特定会社:総資産に占める株式等の割合が50%以上の会社
- 土地保有特定会社:総資産に占める土地等の割合が一定以上(大会社は70%以上、中会社は90%以上など)の会社
- 比準要素数1の会社・比準要素数0の会社:配当・利益・純資産のうち、ゼロの要素が多い会社
- 開業後3年未満の会社、開業前・休業中・清算中の会社
ステップ4:評価額の計算
一般の評価会社(特定の評価会社に当たらない会社)は、会社規模に応じて次のように評価します。
| 会社規模 | 原則的評価方式による評価額 |
|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準価額(純資産価額の方が低ければ純資産価額) |
| 中会社 | 類似業種比準価額×L+純資産価額×(1−L) ※L(併用割合)は0.90・0.75・0.60(純資産価額の方が低ければ純資産価額) |
| 小会社 | 純資産価額と、類似業種比準価額×0.50+純資産価額×0.50のいずれか低い方 |
類似業種比準価額は、同じ業種の上場会社の株価をもとに、配当・利益・純資産の3つの要素を比べて計算します。比べる上場会社の株価や各要素は、国税庁が業種ごとに公表しています。さらに、大会社0.7・中会社0.6・小会社0.5の斟酌率(未上場であることを考えて割り引く率)を掛けます。
純資産価額は、会社の資産と負債を相続税評価額で計算し直して求めます。資産の含み益(評価差額)がある場合は、それにかかる法人税等相当額(37%)を差し引きます。
一方、少数株主の配当還元価額は、「年配当金額÷10%」に「1株当たりの資本金等の額÷50円」を掛けて計算します。配当が少ない会社では、年配当金額を最低の2円50銭として計算します。

計算式がいっぱい出てきて、頭がくらくらするな…。

ポイントは「会社規模が大きいほど類似業種比準価額の比重が大きい」ということです。細かい計算は、評価明細書の順番に沿って進めれば大丈夫ですよ!
⑤よくある間違い・注意点
| よくある間違い | 何が問題か | 正しい対応 |
|---|---|---|
| 株主の判定で親族の持株を合算していない | 同族株主の判定を誤り、評価方式がずれる | 親族・同族関係者の議決権を正しく集計する |
| 会社規模の業種区分を誤る | 大会社・中会社の判定がずれ、評価額が大きく変わる | 売上の多い事業で業種を判定する |
| 純資産価額で土地を帳簿価額のまま計算 | 評価額が実態とずれる | 土地は路線価などの相続税評価額で計算し直す |
| 課税時期前3年以内に取得した土地・建物を相続税評価額で評価 | 純資産価額の計算で認められない | 通常の取引価額(時価)で評価する |
| 名義株を見落とす | 実際の株主と株主名簿がずれ、相続財産の範囲を誤る | 出資の経緯や配当の受取状況を確認する |
特に名義株(名義を借りただけで、実際の出資者が別にいる株式)は、古い会社ほど残っていることがあります。株主名簿だけでなく、設立時の資料や配当の受取状況もあわせて確認しましょう。

土地を持ってる会社は、計算がさらに大変そうだな。

はい、純資産価額の計算では、会社の持っている土地や建物もすべて相続税評価額にし直します。早めに資料を集めておくのがコツですよ。
⑥評価額を見据えた事業承継・相続対策
未上場株式は、相続が起きてから評価しても対策の選択肢が限られます。元気なうちから評価額を把握しておくことが、円滑な事業承継への第一歩です。
- 定期的に株価を試算する:決算ごとに評価額を試算し、相続税の目安をつかんでおく
- 計画的な贈与:暦年贈与や相続時精算課税制度を使い、後継者へ少しずつ株式を移す
- 事業承継税制(納税猶予):一定の要件を満たせば、後継者が取得した株式に対する贈与税・相続税の納税が猶予・免除される制度がある
- 納税資金の準備:役員退職金、生命保険、会社による自己株式の取得などで、相続人の納税資金を確保する
- 株式の分散を防ぐ:遺言や種類株式を活用し、後継者に議決権を集める
事業承継税制には適用期限や細かい要件があり、制度の見直しも続いています。利用を検討する場合は、最新の情報を国税庁や中小企業庁で確認し、早めに税理士に相談してください。なお、相続税の申告期限は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。

相続が起きてから慌てても遅いってことか。

その通りです!株価の試算は、会社の健康診断のようなもの。毎年続けることをお勧めします。
⑦公認会計士の実体験
私自身、未上場会社の株式評価に関わる中で、経営者の方が「うちの株にそんな価値があるとは思わなかった」と驚かれる場面を何度も見てきました。長年利益を積み上げてきた会社や、昔に取得した土地を持つ会社は、純資産価額が想像以上に大きくなりがちです。評価額を早めにお伝えしたことで、後継者への計画的な株式の移転や、納税資金の準備に時間をかけて取り組めたケースもありました。公認会計士として、相続が近づいてからではなく、決算のたびに株価を試算し、家族や後継者と共有しておくことをお勧めします。
keio-samurai(公認会計士・税理士)

早めに知っておけば、打てる手が増えるんだな。

そうなんです!株価の評価は、相続対策のスタート地点なんですよ。
⑧まとめ
相続税における未上場株式の評価の手順をまとめます。
- 未上場株式は財産評価基本通達に従って評価する
- ステップ1:株主の判定(同族株主等は原則的評価方式、少数株主は配当還元方式)
- ステップ2:会社規模の判定(従業員数・総資産価額・取引金額で大・中・小会社に区分)
- ステップ3:特定の評価会社の判定(株式・土地の保有割合が高い会社などは原則として純資産価額方式)
- ステップ4:類似業種比準価額・純資産価額・配当還元価額で評価額を計算
- 評価額が高くなりやすいので、早めの試算と事業承継対策が大切
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類似業種比準価額で使う利益の考え方は法人税別表の見方 主要な別表を公認会計士がわかりやすく解説、通達や法令の調べ方は所得税の論点を調べる方法 法令・通達・判例の調べ方と手順も参考にしてください。

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