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法人の税務調査へ備えるときは、根拠のない指摘順位を覚えるより、自社の取引を帳簿と資料で説明できるかを確認します。この記事では、売上、経費、役員給与、在庫、外注の五つを点検する手順と、通知を受けたときの準備を紹介します。確認項目は実務上の整理であり、全国の指摘件数ランキングではありません。

交際費だけを重点的に見ればいいのか?

取引や会社の事情で確認点は変わります。まず決算の前後で、売上と費用の年度が合っているかを確かめましょう。
売上は、入金と計上の時期を分ける
入金日にだけ売上を記録していると、年度末に提供済みのサービスや引渡し済みの商品を落とす場合があります。契約条件、納品・検収・役務提供の記録、請求書、入金を一組にし、自社の収益計上の方針と照合します。前受金、売掛金、仮受金は内容を明確にしてください。
架空例として、3月に提供を終えて3月売上に計上する取引100万円が、4月に入金されたとします。3月は売上と売掛金を記録し、4月は売掛金の回収として処理する流れです。入金時にも売上を計上すれば二重になります。ただし、実際の計上日は契約と取引の実態に応じて判断します。
経費は、領収書に加えて取引内容を残す
経費の確認では、支払った事実と、業務のための支出であることを分けます。飲食代なら、日付、相手先、参加人数、目的、金額等の記録をそろえ、交際費等の区分や適用する取扱いを確認します。領収書があれば何でも損金になるわけでも、記載が一つ欠ければ必ず全額否認されるわけでもありません。
個人の立替、会社カード、現金精算が重なると二重計上が起こります。架空例で同じ会食3万円がカード明細と立替精算にある場合は、日付・店・金額・精算先を照合し、重複か別取引かを調べます。誤りを直すときは、元の記録を消して経緯を分からなくせず、訂正の理由を残します。
役員給与は、金額だけでなく決議・届出・実際の支給を照合する
役員給与には、定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動給与等のルールがあります。「毎月同額でなければ何も損金にならない」と一括りにせず、採用する区分と条件を確認します。通常改定、臨時改定、業績悪化による改定等は条件が異なり、議事録があるだけで認められるものでもありません。
準備するのは、役員ごとの決議内容、職務執行期間、届出控え、給与台帳、振込記録、源泉徴収の資料です。未払い・支給日の変更があるなら、決議どおり支払ったとみなさず、税理士へ経緯を伝えます。詳細は役員報酬の決め方も参考にしてください。
出典・確認先:国税庁・役員に対する給与(2026年11月2日確認)。
在庫は、数量と評価を別々に確認する
実地棚卸は、期末の在庫がどこに、どれだけあるかを確かめる作業です。自社倉庫以外に保管している在庫、他社から預かっている品、移動中の商品も整理します。数えた日が期末と異なるなら、その間の入出庫を加減して期末数量へ合わせます。
数量が合っても、単価、取得原価、評価方法、破損・滞留品の扱いは別に検討します。売れないという理由だけで帳簿から外したり、値下がり額を自由に損金にしたりしないでください。廃棄の承認・処分記録や評価の根拠を残し、会計と税務の取扱いの違いも確認します。
外注費と給与は、契約名だけで決めない
請求書に「業務委託料」とあっても、それだけで外注費と確定するわけではありません。仕事の指示、時間・場所の拘束、代替者の可否、材料・用具の負担、報酬の計算、事業上のリスク等の実態を確認します。税務上の所得区分、労働法、社会保険の判断は、それぞれ適用する制度に沿って検討します。
| 点検項目 | 資料 | 未確認のときの対応 |
|---|---|---|
| 売上の年度 | 契約・納品・請求・入金 | 提供内容と計上日を担当者へ照会 |
| 経費の内容 | 領収書・利用目的・精算 | 会社負担と私用の区分を確認 |
| 役員給与 | 決議・届出・台帳・振込 | 変更の経緯を税理士へ共有 |
| 在庫 | 棚卸表・移動・評価資料 | 数量差と評価差を別に調べる |
| 外注 | 契約・請求・実際の働き方 | 税務と労務の担当へ相談 |
社内で対応できない項目は、疑問と不足資料をまとめて顧問税理士へ相談します。新しい相談先を探すなら、弥生の税理士紹介サービスも候補です。紹介は無料ですが、点検・申告修正・税務調査立会いの報酬や対応範囲は別途確認します。紹介や顧問契約によって調査・追徴がなくなると保証されるものではありません。
調査の連絡を受けたら、対象と窓口を確認する
国税庁は、実地調査では原則として日時・場所、税目、課税期間、目的、対象資料等の事前通知を行うと説明しています。一方、法令に定める場合には事前通知をしない調査もあります。「無予告なら脱税が確定」「必ず何年おきに来る」と決めつけないでください。
連絡を受けた担当者は、相手の所属・氏名、連絡先、対象期間、求められた資料、希望日程を記録し、社内責任者と税務代理人へ共有します。確認が必要な電話は、公式の連絡先も使って照会します。その場で分からない数字を推測して答えず、調べて回答する項目として残します。
出典・確認先:国税庁・税務調査手続FAQ(2026年11月2日確認)。
月次点検を続けられる記録へする
確認票には、取引日、相手先、金額、帳簿の番号、根拠資料、不明点、確認担当、回答期限、結論と修正内容を記録します。全件を同じ深さで確認できないときは、新規取引、大口取引、期末前後、前期から変わった処理を優先し、確認した範囲も残しましょう。
電子取引の請求書等は、電子帳簿保存法の保存要件や適用する措置を確認して管理します。ファイル名をそろえるだけで要件がすべて満たされるとは限りません。担当が替わっても検索・照合できる保存場所と手順を決め、見つかった誤りを次月のチェックへ反映させることが継続のポイントです。
指摘や疑問が残った場合の記録例
点検で「前年より売掛金が増えた」と分かっても、それだけで計上漏れや不正と断定しません。架空例では、大口契約の回収条件が30日から60日に変わった、期末月の売上が増えた、入金の消込みが遅れた、という別々の原因が考えられます。契約、売上、請求、入金を照合して、どれが事実かを確かめます。
税理士へ渡す質問は「売掛金が増えたので見てください」だけでなく、「A社向け100万円が3月末残高に残っています。納品日は3月20日、請求日は3月末、入金日は5月末です。契約変更の控えと請求書を添付しました。計上年度と回収の処理を確認したいです」と具体化できます。会社名と金額は架空です。
申告済みの誤りが見つかった場合は、元の申告書・帳簿・原因資料を保存し、対象年度と税額への影響、修正方法、提出期限等を専門家へ確認します。調査の連絡前後で手続や加算税の扱いが変わる場合もあるため、「後でまとめて直せば同じ」と放置しないようにしましょう。


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