「法人税の申告書をもらったけど、別表(べっぴょう)が何枚もあって、どこをどう見ればいいのか分からない…」——そんな疑問に、公認会計士・税理士の視点でお答えします。この記事では、法人税別表のうちとくに重要な別表の役割と見る順番を、専門用語をかみくだいて解説します。
①なぜ法人税別表の見方を知っておくべきなのか?
会社の利益(決算書の当期純利益)と、法人税を計算するための所得金額は、実はイコールではありません。この「ズレ」を調整して税額を計算するための書類が別表です。別表が読めると、自社がいくらの税金を、なぜ払っているのかを自分の言葉で理解できるようになります。
税理士に申告を任せている経営者の方でも、別表の見方を知っておくと、申告内容のチェックや、銀行・税務署とのやり取りで大きな武器になります。逆に見方を知らないと、誤った申告に気づけなかったり、使えるはずの節税の余地を見落としたりするリスクがあります。

別表って枚数が多くて、見ただけで頭が痛くなるんだよな…。全部読まないとダメなのか?

いえいえ、全部を完璧に読む必要はないんですよ!まずは「別表一・四・五(一)」の3つを押さえれば、申告書の骨格はつかめます。
②法人税別表とは?基本の考え方
別表とは、法人税申告書に添付する「計算の明細書」のことです。別表は番号で管理されており、別表一・別表二・別表四…というように、それぞれ役割が決まっています。会社の規模や取引内容によって使う別表は変わりますが、ほとんどの会社で共通して登場するのが次の3つです。
- 別表一…申告書の「表紙」。最終的な税額を記載する
- 別表四…会計の利益を、税務上の所得に調整する「税務版の損益計算書(PL)」
- 別表五(一)…税務上の純資産を管理する「税務版の貸借対照表(BS)」
ポイントは、別表四が「税務版PL」、別表五(一)が「税務版BS」という対応関係です。決算書のPLとBSの関係と同じイメージで捉えると、グッと理解しやすくなります。法令の根拠を自分で確認したいときは、国税庁ウェブサイトで各別表の様式と記載要領が公開されています。

なるほど、別表四がPLで別表五(一)がBSか。決算書とつなげて考えればいいんだな。
③主要な別表の役割を一覧で整理
まずは代表的な別表が「何をするための書類なのか」を一覧で押さえましょう。すべて使うわけではなく、自社に関係するものだけを見れば十分です。
| 別表 | 正式名称(要約) | 役割 |
|---|---|---|
| 別表一 | 各事業年度の所得に係る申告書 | 最終的な税額を記載する表紙 |
| 別表二 | 同族会社等の判定 | 同族会社かどうかを判定する |
| 別表四 | 所得の金額の計算 | 利益→所得への調整(税務版PL) |
| 別表五(一) | 利益積立金額等の計算 | 税務上の純資産(税務版BS) |
| 別表五(二) | 租税公課の納付状況 | 税金の納付・未納の管理 |
| 別表七(一) | 欠損金の損金算入 | 過去の赤字(繰越欠損金)の管理 |
| 別表十五 | 交際費等の損金算入 | 交際費の使いすぎ分を計算 |
| 別表十六 | 減価償却資産の償却額計算 | 減価償却費の限度額を計算 |

交際費や減価償却に専用の別表があるのは、「使いすぎ」や「計上しすぎ」を税務上チェックするためなんですよ!
④別表四の見方|利益から所得を計算する手順
別表のなかでもいちばん大事なのが別表四です。ここで「会計の利益」を「税務の所得」に作り替えます。計算は次の流れで進みます。
- 当期利益(または当期欠損)からスタート(決算書の数字)
- 加算…費用に入れたが税務上は認められないものを足し戻す
- 減算…利益に入っているが税務上は除くものを引く
- その結果が所得金額になり、ここに税率をかけて法人税を計算する
加算・減算の代表例
| 区分 | 具体例 | 理由 |
|---|---|---|
| 加算 | 法人税・住民税 | 税務上は費用にできない |
| 加算 | 交際費の限度超過額 | 使いすぎた分は経費と認めない |
| 加算 | 減価償却の超過額 | 限度額を超えた償却費は認めない |
| 減算 | 受取配当等の益金不算入 | 二重課税を避けるため利益から除く |
| 減算 | 繰越欠損金の当期控除額 | 過去の赤字を当期の所得から控除 |
さらに別表四では、加算・減算した項目を「留保」と「社外流出」に分けて記載します。留保は会社の中にお金(資産)として残るもの、社外流出は配当や交際費のように会社の外へ出ていったものです。この「留保」が、次に説明する別表五(一)につながっていきます。

利益にそのまま税率をかけてるわけじゃないのか。加算・減算でこんなに調整してるんだな。
⑤別表四と別表五(一)の関係|よくある間違い
別表の理解でつまずきやすいのが、別表四(税務版PL)と別表五(一)(税務版BS)のつながりです。決算書でPLの利益がBSの純資産に積み上がるのと同じで、別表四の「留保」が別表五(一)の利益積立金額に積み上がっていきます。
正しく作られていれば、両者は次の検算式で必ず一致します。手書き・手入力の申告書では、ここがズレているケースが少なくありません。
- 別表五(一) 期首利益積立金額 + 別表四「留保」の合計 − 当期の法人税・住民税の納税分 = 別表五(一) 期末利益積立金額
初心者がやりがちな3つの間違い
- 留保と社外流出の区分ミス…交際費を留保にしてしまう等で五(一)が合わなくなる
- 翌期の「認容(戻し)」忘れ…前期に加算した項目を翌期に減算し忘れ、二重課税になる
- 別表五(二)との不整合…納税額の記載が別表四・五(一)とそろっていない
こうした論点を自分で調べたいときの手順は、所得税の論点を調べる方法|法令・通達・判例の調べ方と手順の考え方が法人税でもそのまま応用できます。

「別表四と五(一)が検算で一致するか」を確認するだけで、申告書のミスの大半は防げるんですよ!
⑥別表から見つける節税・チェックのポイント
別表は「税額を計算する書類」であると同時に、節税やリスク確認のチェックリストにもなります。次の点を毎期確認する習慣をつけましょう。
- 別表七(一)…繰越欠損金の残高と使用期限(原則10年)を確認し、使い切る前に失効させない
- 別表十五…交際費の限度(中小法人は年800万円まで等)に対し、どれだけ余裕があるか把握する
- 別表六…受取利息・配当から天引きされた所得税の控除もれがないか確認する
- 別表十六…減価償却の計上もれがないか(特に少額資産の特例の使い忘れ)を確認する
こうした別表は、freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトの申告機能でも自動作成できますが、数字の意味を理解したうえで最終チェックすることが何より大切です。法人化を検討している段階の方は、個人事業主が法人化するタイミングと節税効果もあわせて読むと、法人税の全体像がつかめます。
⑦公認会計士としての実体験
私自身、監査や顧問の現場で数多くの法人税申告書を見てきましたが、別表は「順番に読む」ことが何より大切だと感じています。まず別表一で税額の全体像をつかみ、次に別表四で所得の計算過程を追い、最後に別表五(一)で検算して整合性を確認する——この流れを習慣にすると、初めて見る会社の申告書でも短時間で要点を把握できます。経営者の方には、別表四の加算・減算の項目だけでも毎期目を通すことをお勧めします。自社が「なぜその税額なのか」が見えると、税金との付き合い方が大きく変わります。
keio-samurai(公認会計士・税理士)
⑧まとめ
法人税の別表は枚数が多く難解に見えますが、役割を押さえれば決して怖いものではありません。最後に要点を整理します。
- 別表は申告書の「計算明細書」。まずは別表一・四・五(一)を押さえる
- 別表四=税務版PL、別表五(一)=税務版BSと対応させて理解する
- 別表四は当期利益→加算→減算→所得金額の流れで読む
- 別表四の「留保」が別表五(一)に積み上がり、検算式で一致するかが要チェック
- 別表七(一)・十五・十六は節税・もれ確認のチェックリストとして活用する
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