法人税と所得税どっち?組合・匿名組合・LLPの課税を解説

会計

「組合や匿名組合、LLPで儲かったお金には法人税がかかるの?それとも所得税?」という疑問に、公認会計士・税理士の視点でお答えします。この記事では、任意組合・匿名組合・LLPの課税の仕組みと、どちらの税金がかかるのかの見分け方を、まちがえやすいポイントとあわせて解説します。

①なぜ「法人税か所得税か」で迷うのか?

会社(株式会社・合同会社)なら「儲け=法人税」とシンプルです。ところが、組合・匿名組合・LLPになると話が変わります。これらは多くの場合、組織そのものには課税されず、出資した人・会社に直接課税される仕組みだからです。つまり「誰が出資しているか」で、かかる税金が法人税にも所得税にもなり得るのです。

源五郎丸
源五郎丸

組合で儲けたら、組合が税金を払うんじゃないのか?

太郎
太郎

多くの組合は「素通り」なんです。儲けはメンバー本人に直接課税されますよ!

②基本概念:パススルー課税(構成員課税)とは

パススルー課税(構成員課税)とは、組織の段階では課税せず、利益や損失を出資者(構成員)にそのまま帰属させて課税する方式です。「導管(パイプ)」のように、儲けが組織を素通りしてメンバーに流れていくイメージです。

このとき、かかる税金は構成員が誰かで決まります。

構成員(出資者)かかる税金
個人所得税(+住民税)
法人(会社)法人税

つまり「法人税か所得税か」は、組合の種類だけでは決まらず、そこに出資しているのが個人か会社かで決まる、というのが最大のポイントです。

③任意組合(民法上の組合)の課税

複数人でお金や労力を出し合って共同事業を行うのが任意組合(民法上の組合)です。共同経営や共同出資の不動産事業などで使われます。

  • 組合自体には課税されない(完全なパススルー
  • 利益は各組合員の出資割合などに応じて分配され、個人組合員は所得税、法人組合員は法人税
  • 所得の種類(事業所得・不動産所得など)は、その事業の中身に応じて判定
  • 損失も分配されるが、個人の組合員は出資額を超える損失を取り込めない制限がある
源五郎丸
源五郎丸

じゃあ組合員が個人なら、自分の確定申告に組み込むのか?

太郎
太郎

そのとおりです。分配された利益を、自分の所得として申告することになります!

④匿名組合(TK)の課税

匿名組合(TK:Tokumei Kumiai)は、出資者(匿名組合員)が事業者(営業者)にお金を出し、その事業の利益の分配を受ける仕組みです。表に名前が出ないため「匿名」と呼ばれ、不動産ファンドや事業投資で使われます。

任意組合と違い、事業を行うのは営業者です。利益分配の扱いは次のようになります。

  • 営業者が事業を行い、匿名組合員への分配金は営業者側で損金になる
  • 匿名組合員が受け取る分配金は課税対象。個人は原則「雑所得」(事業として行う場合は事業所得)
  • 法人の匿名組合員なら益金(法人税の対象)
  • 個人へ支払うときは、営業者が20.42%の源泉徴収を行うのが原則

「素通り」に近いものの、営業者が一度利益を計上してから分配する点が、任意組合との違いです。

⑤LLP(有限責任事業組合)と、よくある間違い

LLP(有限責任事業組合)は、出資者全員が有限責任(出資額までしか責任を負わない)でありながら、パススルー課税を受けられる事業体です。専門家同士のジョイントベンチャーなどで使われます。

  • LLP自体には課税されず、個人組合員は所得税、法人組合員は法人税
  • 有限責任なのにパススルー、という点が最大のメリット
  • 個人組合員には、出資額を超える損失の取り込み制限がある

要注意:LLP と 合同会社(LLC)は別物

もっとも多い誤解が、LLP合同会社(LLC)の混同です。名前が似ていますが、課税はまったく違います。

事業体法人格課税
任意組合なしパススルー(構成員課税)
匿名組合なし分配金に課税(個人は雑所得等)
LLP(有限責任事業組合)なしパススルー(構成員課税)
合同会社(LLC)あり法人税(会社と同じ)

日本の合同会社は法人格があり、株式会社と同じく法人税がかかります。パススルーではありません。アメリカのLLCはパススルーを選べますが、日本のLLC(合同会社)は別物なので注意しましょう。

⑥どれを選ぶ?活用の考え方

税金の観点からの、ざっくりした使い分けの目安です。

  1. 共同事業の損益を各自の申告に取り込みたい→ 任意組合・LLP(パススルー)
  2. 有限責任にしたいが法人税は避けたい→ LLP
  3. お金だけ出して分配を受けたい(投資)→ 匿名組合
  4. 法人として信用や継続性を重視したい→ 合同会社・株式会社(法人税)

ただし、パススルーは損益が個人の所得と合算されるため、税率や社会保険への影響も変わります。判断に迷ったら、国税庁のタックスアンサーを確認しつつ、税理士に相談するのが安全です。

⑦著者の実体験

私自身、匿名組合出資の分配金を「配当のようなもの」と思い込み、申告区分をまちがえかけたお客様に何度もお会いしてきました。個人が受け取る匿名組合の分配は、原則として雑所得であり、源泉徴収されていても確定申告が必要になるケースが多いです。また、LLPと合同会社を同じものだと誤解して設立してしまう例も少なくありません。公認会計士として、事業体を選ぶ前に「誰が出資し、どの税金がかかるのか」を必ず確認することをお勧めします。

keio-samurai(公認会計士・税理士)

⑧まとめ

「法人税か所得税か」のポイントを整理します。

  • 組合・匿名組合・LLPは多くがパススルー。組織ではなく構成員に課税
  • 構成員が個人なら所得税、法人なら法人税
  • 任意組合・LLP=完全なパススルー(構成員課税)
  • 匿名組合=分配金に課税。個人は原則雑所得、20.42%源泉あり
  • 合同会社(LLC)は法人格があり法人税。LLPとの混同に注意

「誰が出資しているか」で税金が変わる、という原則を押さえておけば、事業体選びで迷いにくくなります。設立前に一度、税務の視点で整理しておきましょう。

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